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頬にうっすら広がる薄茶色を、シミだと思って市販品を試してきた——診察室でよく伺うお話です。実は肝斑(かんぱん)は、一般的なシミとは分けて考えたほうがよいもので、対応の順番も違います。この記事では、肝斑の見分け方、皮膚科でどう対応するか、そして自宅で何をすればよいかを、皮膚科専門医が順に説明します。
肝斑とは 境界のぼやけた、左右対称の色素斑
肝斑は、両頬・額・口のまわりなどに左右対称にあらわれる、境界のはっきりしない薄茶色の色素斑です。30代以降にあらわれることが多く、女性に多く見られます。
見分けるときに見ている3つの点
- 左右対称かどうか — 左右の頬に、同じくらいの大きさ・形で出ていることが多い。
- 境界がはっきりしているか — 肝斑はふちがぼやけて、面で広がって見えることが多い。
- いつから、どう変わってきたか — 妊娠・出産、ピルの服用開始、更年期などの時期に目立ちはじめたという経過は手がかりになります。
ただし、実際の肌では複数の色素斑が重なっていることが少なくありません。見た目だけで自己判断せず、気になる段階で一度見てもらうほうが遠回りになりません。
| 種類 | 出やすい場所 | 見え方 | 出やすい時期 |
|---|---|---|---|
| 肝斑 | 両頬・額・口のまわり | 左右対称、境界がぼやけて面で広がる | 30代以降 |
| 老人性色素斑(一般的なシミ) | 頬骨の上、こめかみ、手の甲 | 境界がはっきりした円形〜楕円形 | 40代以降に目立ちやすい |
| そばかす(雀卵斑) | 鼻の周囲から頬 | 数ミリの小さな斑が散在する | 幼少期から。体質による |
| 炎症後色素沈着 | ニキビや傷のあったところ | もとの炎症の形に一致する | 炎症のあと。時間とともに薄れることが多い |
なぜできるのか わかっていること、わかっていないこと
肝斑の原因は1つに決まっていません。ただし、悪化させる方向にはたらく要因として、次の3つがよく知られています。
- 紫外線 — もっとも避けやすく、もっとも効きます。季節を問いません。
- 女性ホルモンの変動 — 妊娠・出産、ピルの服用、更年期などの時期に目立ちやすくなることがあります。
- 摩擦 — 洗顔・タオル・コットン・マッサージなど、日々の物理的な刺激の積み重ねです。
逆にいえば、3つのうち2つは自分の手で減らせます。ここが肝斑の対策の中心になります。
皮膚科ではどう対応するのか
肝斑は、短期間で消すことを目指すより、悪化させない条件を整えながら年単位で薄くしていく考え方が中心です。実際に用いられるものを挙げます。
- トラネキサム酸の内服 — 肝斑に対して用いられることの多い内服です。数か月単位で続けて経過を見ます。
- 外用 — トラネキサム酸を配合した薬用化粧品のほか、ハイドロキノンやトレチノインを用いることもあります。
- レーザートーニング — 弱い出力を広い範囲に繰り返し当てる方法で、複数回の来院が前提になります。
いずれも時間と費用がかかり、見た目の変化がわかるまでに間があります。途中で自己判断でやめてしまう方が多いのは、そのためです。
費用については、肝斑を目的としたトラネキサム酸の処方は自費になることが一般的です。ほかの病名に対して処方される場合は保険が使われることもあるため、受診前に確認しておくと安心です。
また一般的なシミに用いる強い出力のレーザーを肝斑に当てると、かえって濃くなることがあります。シミのつもりで受けた施術で悪化するのは、実際に起こりうることです。だからこそ、まず何なのかを見分けるところから始めます。トラネキサム酸そのものについては肝斑とトラネキサム酸:肌の色素沈着へのアプローチもあわせてご覧ください。
自宅でできることは3つに絞れる
こすらない、日ざしを減らす、記録する。この3つが自宅での柱です。
1 こすらない
洗顔料はよく泡立てて、指が肌に触れない厚みで洗います。すすぎの湯温は32〜34℃を目安に、熱いお湯を顔にかけないでください。タオルは押さえるだけ、化粧水はコットンを使わず手のひらで包むように置くと、摩擦を減らせます。マッサージや強いクレンジングの習慣がある場合は、いったん止めて様子を見ます。
2 日ざしを減らす
日やけ止めはSPF30・PA+++以上を目安に毎日、屋外にいる日は2〜3時間おきに塗り直します。曇りの日も、窓ぎわで過ごす日も同じです。帽子・日傘・サングラスなど、塗り直さなくてよい対策を組み合わせると続けやすくなります。選び方は日やけ止めのSPFとPAの選び方で説明しています。
3 記録する
肝斑は変化がゆるやかなので、鏡の印象だけでは判断できません。月に1回、同じ場所・同じ明るさ・同じ角度で写真を撮っておくと、続ける理由にも、方法を変える理由にもなります。
使うものを選ぶときは、まず区分を見る
美白と表示できるのは、承認を受けた医薬部外品だけです。ここでいう美白とは、メラニンの生成をおさえ、シミ・そばかすを防ぐという意味に限られます。化粧品にはこの表示ができません。逆にいえば、美白と書かれていない=品質が劣る、ではありません。単に区分が違うだけです。
so.Effie では、TAホワイトニングローションとソフトピールトナーの2品が医薬部外品にあたります。前者は有効成分トラネキサム酸を配合した薬用化粧水、後者は薬用導入液です。
区分の違いと全成分表示の読み方はドクターズコスメはどう選べばいい?皮膚科専門医が教える成分の見分け方で詳しく説明しています。
こんなときは早めに相談を
次に当てはまる場合は、自己流のケアを続ける前に一度見てもらってください。
- 数か月のうちに急に濃くなった、または範囲が広がった。
- 左右非対称で、片側だけにある。
- 盛り上がりがある、色ムラや黒い点が混ざっている、ふちが不規則。
- 妊娠中・授乳中で、使えるものの範囲を知りたい。
よくある質問
肝斑と一般的なシミはどう違うのですか?
肝斑は両頬などに左右対称にあらわれ、ふちがぼやけて面で広がって見えることが多いのが特徴です。一般的なシミ(老人性色素斑)は境界がはっきりした円形〜楕円形で、左右対称とは限りません。実際には複数が重なっていることも多く、見た目だけで区別がつかない場合があります。
肝斑は自然に治りますか?
妊娠やピルの服用など、きっかけがはっきりしている場合は、その要因がなくなったあとに薄くなっていくことがあります。一方で、紫外線や摩擦が続いていると長く残ることもあります。放っておけば必ず消えるとも、必ず残るとも言えません。
市販の化粧品で肝斑は消せますか?
化粧品にできるのは、肌をすこやかに保ち、乾燥を防ぐといった範囲のはたらきです。承認を受けた医薬部外品であれば、メラニンの生成をおさえてシミ・そばかすを防ぐという意味での美白を表示できますが、これは「できてしまった肝斑を消す」という意味ではありません。消すことを目的とするなら、皮膚科でご相談ください。
トラネキサム酸の内服には保険がききますか?
肝斑を目的とした処方は自費になることが一般的です。ほかの病名に対して処方される場合は保険が使われることもあります。医療機関によって扱いが異なるため、受診前に確認しておくと安心です。
肝斑にレーザーを当てても大丈夫ですか?
一般的なシミに用いる強い出力のレーザーは、肝斑では悪化の原因になることがあります。肝斑に対しては弱い出力を繰り返し当てる方法が選ばれます。まず何なのかを見分けたうえで方法を決めてください。
妊娠中に肝斑が濃くなりました。どうすればいいですか?
妊娠中はホルモンの変動があるため、目立ちやすい時期です。この時期は、こすらないことと紫外線対策を中心に組み立てます。内服・外用の可否は必ず担当医にご確認ください。
日やけ止めはどのくらいの強さを選べばいいですか?
日常的に使うなら、SPF30・PA+++以上を目安にしてください。数値の高さよりも、規定量を塗り、2〜3時間おきに塗り直すほうが結果に効きます。
まとめ
肝斑は、消し方より先に、増やさない条件を整えるほうが近道です。最後に整理します。
- 肝斑は左右対称・境界がぼやけた色素斑。一般的なシミとは分けて考える。
- 悪化要因は紫外線・ホルモン変動・摩擦。うち2つは自分で減らせる。
- 皮膚科での対応は年単位。途中でやめないための記録を残す。
- 強い出力のレーザーは肝斑を濃くすることがある。見分けが先。
- 美白と表示できるのは医薬部外品だけ。表示の有無は品質の差ではない。
実際の肌を見ないと、肝斑なのか、ほかの色素斑が混ざっているのかは分かりません。ふじもと皮フ科クリニックでは肌診断装置を用いた評価も行っていますので、気になる段階でご相談ください。
記事監修者
ふじもと皮フ科クリニック 院長
藤本 栄大(ふじもと えいた)
医学博士
防衛医科大学校卒業後、自衛隊病院・防衛医科大学校附属病院での勤務を経て日本皮膚科学会皮膚科専門医を取得。同大学院在籍中に米国UC Davis(皮膚科学教室)へ留学し医学博士を取得。海上幕僚監部衛生企画室勤務、南極観測船「しらせ」医務長(第54次)、Pacific Partnership参加等を経て、2015年にふじもと皮フ科クリニックを開院。so.Effie の処方設計を監修しています。
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